2人目…シラタマの話
「 みていたのは、「どっち」? 」
トリはシラタマを見た。
寝ころんで聞いていたシラタマは体を起こした。
窓際にトリを抱えて座っていたカラスが、そんな彼女に話を振る。
「サトリが目を閉じたから、俺の話はここでおしまい。次は、シラタマかな?」
「なんか、ディープな話の後に言うのも、あれだけど・・・。まぁいいや。それじゃぁ、あたしは最近の話をするよ。昔の話って苦手だし。」
そう言うと、シラタマはあぐらをかいた。
そんな彼女を、トリはじっと見上げている。
えーっとね。
つい最近・・・って言っても、いつだったか忘れちゃったけれど。
秋の話。清水寺に行ったの。
その時も何かお香が焚かれてたのかな。それが凄くてさ。あたし、ぼんやりしていたの。
そこが、ちょうど一応屏風はあるんだけれど、見ようと思えば姿も見えるし、声も聞けるような場所でさ。でも、趣き深いし、人がほとんど居ないから、ぼんやりするには最適だったんだ。
でね、そんな所で泣いている声が聞こえたの。
一体誰だろうって思ったけれど、動くとあたしが居るのがわかるかな、と思ってそのまま聞いてたんだ。
ただ、そのうち夕方になってきたから、そろそろ帰らないと行けないなと思ってきたの。そしたら、風がめちゃくちゃ強く吹いたんだ。葉っぱが滝の方へ乱れ散って、真っ赤な紅葉があたしの居る前に、隙間がないくらい、びっしり落ちてきたんだ。それを見てたら、何か色々考えちゃって。あたしもしばらく考え事しながら、風景を眺めてたんだ。
そしたら、ものすごく小さな声で、さっき泣いていた人が言うんだ。
「こんな哀しい世の中が、もう本当に嫌になった。
早く消えて無くなりたいと思う私は、しぶとく生きているのに、何も辛いことが無いだろう木の葉は風で散っていく。
いっそ木の葉と私の体を取り替えたいな。あの、ろうそくの火すらも羨ましい」って。
それが本当に小さな声で、でもすごく真剣に言ってたんだ。それを聞いていて、あたし、身に染みた。
すごく可愛そうだと思ったけれど、あたしなんかが何を言えるんだろうと思ったら何も言えなくて。だから、結局何も言わないで、そこに居たよ。
今、話ながら思ったけれど、何も言わなかったのは、よく無かったかな。
何か言えば良かったのかな。
カラスもトリも何も言わなかった。
トリはゆっくりと目を閉じた。
最後のシラタマの言葉が、1番胸に染みた。頭の中で話を反芻する。
いつもよりも、2人の話が面白い。
だからだろうか、何だか胸がもやもやしてきた。
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